聞こえないはずの生活音
昼寝をしようと目を瞑りいい感じにふわぁ〜っ夢の国に落ちかけたその時、聞き覚えのある生活音がした
冷蔵庫の製氷機を開けるガラガラっという音
氷をコップに入れるカランコロンっという音
コップにお茶をそそぐタプッタプッという音
たしかに、はっきりと聞こえるのだが、その時家には私しかいなかった
何が起こっているのか確認したいのだが、何故か瞼が重く中々開かない
それでも必死に目玉をグリグリと動かしていると、やっと3分の1程のみだが開くことができた
するとそこには仕事に行ったはずの彼の姿がうっすらと見える
不思議に思い声をかけたいのだが、何故か声が出ない、体も動かない、目もしっかり開かない
どうすれば良いか分からずパニックになっている私に彼が近づいて来て、何かを伝えようと口を開いた瞬間、体が一気にふわっと軽くなり起き上がることができた
が、そこに彼の姿はなく昼下がりの生ぬるい空気の部屋に私がいるだけだった
不思議な体験でした
答えは玉子焼きにあった
私の彼に対する好意は愛情なのか、それとも長年連れ添った故のただの情なのか
時々、分からなくなってしまうことがある
彼はとても優しい人だ
そんな彼に惹かれていた
が、その優しさに慣れてしまったのだろう
私はなんて贅沢でぬるい人間なのだろうと自分でも思う
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愛情なのか情なのか
その答えが今朝分かった
私は毎朝、彼と同じ時間に起きて彼の朝食と昼食のお弁当を作る
これはルーティーンなので優しさではない
今朝もいつものように玉子焼きを作った
一部が少し焦げてしまったのだが、六等分に切って焦げていない綺麗な面の玉子焼きを彼のお弁当に無意識に詰めている自分に気がついた
私は恥ずかしながら食べ物への執着心が強い
そんな私が焦げた部分は自分用に残し綺麗な面を彼に譲っていたのだ
しかも無意識だ
彼に対する情には愛がたしかにあると確信できた
そんないつもと変わらぬ朝だった
眠れない夜のこと
会社員の頃、一番のストレスは時間に縛られるということだった
お風呂に入りスキンケア、ドライヤーを全て終わらせ、完璧な状態で布団に潜り込みSNSをチェックしたりYouTubeを見たりする時間が幸せの絶頂と感じる私な訳だが、"明日も仕事があるし早く寝ないといけない"そういう感情が邪魔をして、その絶頂の時間さえ心から楽しめないのがストレスだった
だから
仕事を辞めた
すると、まぁ不思議
時間を気にせず絶頂の時間を心から楽しめるようになったのだ!
どうしてこんなに簡単なことをもっと早く実行しなかったんだと後悔さえした
もちろん収入は無くなるが、仕事を辞めた私の思考は無敵状態になっていたので、何故かお金やその後のことは全く不安に感じなかった
そして好きなだけ夜更かしをし昼夜逆転し、普通の生活に戻れなくなり眠れない夜が続く中、感じたことは、眠れなくて暇を持て余している夜が結局は一番つまらなくて一番幸せだということだ
不満が生む幸せもある
友人カップルはカフェ巡りが趣味でコーヒーとスイーツを嗜みながらたわいも無い会話に花を咲かせるというのが休日のデートの定番らしく私もそんなデートに憧れがあった
しかし私の彼はザ ・男飯というようなご飯が好きでコスパと量に重きを置いているような人である
それを知った上でコーヒーが一杯500円前後するような場へ誘うのは気が引けるし誘っても渋られるので不満を感じていた
そんな中、SNSで某カフェの期間限定スイーツが話題になっているのを目にし、どうしても食べたいという気持ちが抑えられず気づけば1人でそのカフェに来ていた(友人を誘ったが都合が合わなかった)
この時が私の初めての1人カフェデビューだった
最初こそ1人カフェの空間にソワソワしていたものの、途中からは彼がカフェが好きな人じゃなくて良かったとまで思うようになっていた
美味しいスイーツと温かいコーヒーに囲まれながら過ごす1人の空間がこんなにも心地良く穏やかな気持ちになれ幸せを生むものだと知れたからである
不満が生む幸せもある
ありがとう彼君